登山&アウトドアガイドの沖本です!
私は大学では地理(地図)を学んだプロガイドです!
これまで多くの読図講習会の講師をしてきました。地図は得意です(^^) 多い年は年間100名くらいに地図の話をしてきました。
どうして登山では地図読みが必要なのか
初心者はもちろん、登山の経験が長くても、できない人が多いのがきちんと地図を見ること、読むことです。現在地を把握するという基本的な使い方から見たい山を調べることまで、このサイトでは完結に易しく紹介します。何度も読んで、基本を覚えて山を歩きましょう。
そして、連れて行ってもらう登山者から、連れていける登山者になりましょう!
大きく分ければ3つの目的があると思います。
登山前の準備
登山の準備をする段階で、コースの地形や所要時間を把握することが必要です。
ガイドブックを読んだり、ヤマレコやブログだけ見て登っている人いませんか?
アップダウンと距離の把握、危険場所の把握などなど。下調べは地図を見ながらして欲しい。
登山中の現在地とルートの確認
基本中の基本ですね。でもこれすらしない人が多いのが現実ですが。
山中で迷う人は、これをやっていない人か出来ない人です。
見たい山や見える山を調べる
専門用語では山座同定といいます。コンパスを使える技術も必要になります。これができるようになれば、ワンランク上の登山者ですね。見える山がわかるようになれば、登山はずっと楽しくなります。もちろん、難易度は少し上がります。
登山で必要な地図
登山で使用する理想の地図は、国土地理院の25000分の1の地形図になります。
そして、人気のある山域では昭文社が販売する山と高原地図。
この2つが登山地図の基本になります。
ガイドブックの地図は論外。。。絶対にそれだけで登らないように。
国土地理院の地形図
都市圏の大きな書店では販売していますが、比較的手に入りにくいです。
近年は、ネットの地図に押されて売上が激減中。余裕を持って注文することが必要。
マイナーな山域では地形図本体、もしくはダウンロードのどちらかを絶対に持っていきたい。
長所
細かい地形が把握しやすく、日本の地図の基本となっています。
日本中のすべての場所の地図が発行されている。
短所
登山用ではありません。。。ということは、登山道の記載はあれどトイレや危険箇所の把握は出来ないということです。紙なので、濡らしてしまえば破れやすくなります。
地形図をPCで準備する方法を紹介します
昭文社の山と高原地図
昭文社の発行する山岳案内に特化した地図です。メジャーで登山道がしっかりしていて、登山者が特に多い山域だとこれがあれば地形図の準備はいらないですね。
長所
登山に必要な情報は一通り記載されています。コースタイム・登山道・山小屋・トイレ・水場の各情報も。合成紙で雨に強く、防水は考えなくてもいいようになっています。
短所
値段が地形図より高い、人気のない山は作られていないこと。大半が50000分の1の縮尺なので、細かい地形が読めないです。
地図の読み方・見方(読図技術)
理想なのは地図を見ただけで、なんとなくどんな山かイメージできること。
でも正直難しい。。。大切なのは地図を見て正確な数値を読み取ること。
地形図の縮尺と距離
25000分の1は4cmが1km
50000分の1は2cmが1km
等高線
等高線とは、同じ高さを結んだ線。
25000分の1は10mごとに細い計曲線と50mごとに太い主曲線が引かれています
50000分の1は20mごと計曲線、100mごとに太い主曲線が引かれています。
等高線の間隔が狭い所は急で、広い所はなだらかです。
等高線の50mごとに引かれる主曲線をなぞってみました。
地形の把握が簡単にできると思います。等高線を読むのが難しいと思った方におすすめの方法です。
白馬岳の周辺は西側が等高線の間隔が広いのでなだらかで、
東側は等高線の間隔が狭いので急だということが、ひと目でわかりますね。
地図記号
小学校の時に習ったはずですが、覚えていますか??
正直、工場やら消防署やらの記号は登山ではどうでもいいです。
覚えたいのは植生記号や崖、雪渓など。
竹林、針葉樹、広葉樹、荒れ地、ハイマツなどの記号を確認することで、登山道の雰囲気を推測することができます。
地図記号は国土地理院のサイトでご確認下さい。
針葉樹のマークは植林され暗くて面白くない登山道。
広葉樹のマークは自然が残る楽しい道。
ハイマツのマークは森林限界を抜けて爽快な道。
なんてことが想像できるんです。
尾根と谷
谷と尾根を見分ける。地図読みの基本の基本。
等高線をよく見ることによって、わかります。
私が例えるのは、手を広げて「指が尾根」で、「指の間が谷」。
実際はこんなに簡単ではありませんが・・・。
地形図ではこんな感じになります。
緑のマーカーが尾根、ピンクが谷。
山頂から等高線が飛び出ているのが尾根、凹んでいるのが谷。
難しい?? 何度も眺めてみましょう。
それでもわからない方は、私が年に数回開催する講習会へご参加を!
地図を使って登山前に準備すること
登山ルートを把握する
ガイドブックや山と高原地図などから、目的の登山道を記入します。
どんな地形を歩くのか、登りは急は緩いかと考えながら、登山道を記入すること。
所要時間や気をつけたいポイントなどを確認しながら。
エスケープルートの確認
あまりやっていいる人は多くないと思いますが、エスケープルートの選定は大切です。
最短往復のピストンコースで歩く場合は別ですが。
もしここで調子が悪くなったら、時間が足りなくなったらどうする??と想像してみましょう。最後まで歩くより、安全な道があれば途中から下山したほうがいいですよね。歩くコースが長くなれば長くなるほど、エスケープルートの確認は大切。
磁北線を引く
ややこしい、本当にややこしいけど、
地図の北と、コンパス(磁石)の指す北は違います。。。。
メッチャ大事なことなのに、地図には数文字で「磁北偏差・・・°」と書かれているだけです。
でもこれをちゃんとしないと、地図とコンパスはセットで正確に使えません。
磁北線の引き方はこの次で詳しく
磁北線の引き方
地図の北と、コンパス(磁石)の指す北は違う
その地図の北と磁石指す北のズレを磁北偏差と呼びます。
例えば、西偏7度20分の場合は、地図の真北から西に7度20分ズレて磁石の北があるということです。
コンバスの角度は時計回りに0度から360度なので、磁北を合わせる時はコンパスの360度から7度20分を引いて、約353度方向になります。
地形図には必ず記載があり、 6.磁気偏角は西偏7°20’とあります。
誤差の範囲ですが、知っておくといいのは7度20分の分は60進数ということ。
例えば7度30分は7.5度です。この概念は時間と同じです。
7度59分の次は8度になります。
北に行くほど磁北偏差は大きく、南に行くほど小さくなります。
磁北極は常に移動している
地図の北と磁石の北が違うだけでもややこしいのに、
磁北極が絶えず移動しているなんて。。。もうわけわからなくなりそうですよね。
雑学っぽいっですが、知っておいて損はない!
下の地図は磁北極の移動を示しています。
(ウィキペディアより引用)
という事は。。。地形図の購入年度によって数値が違うんです。
通常の登山で使う精度では、誤差の範囲内で気にすることはあまり無いですが。
例えば、平成14年の神戸首部(六甲山)は7°00’
しかし、平成25年の神戸首部(六甲山)は7°10
となっています。
もしも磁北を考慮しないと、磁北偏差西偏7°の場合、
1km先のものですら120mもずれます。10km先だと1.2kmも・・・。
磁北極付近ではコンパスは役に立たない
カナダの北極圏に行ったことがあるのですが、その時の地図には下記の注意書きがありました。Magnetic compass uselss 磁石のコンパスは役に立たない。。。。
GPSのなかった時代、北極探検の船が多く遭難した理由の一つかもしれません。
この心が震えるような美しい景色も、恐怖だったことでしょう。
磁北線を引く
先程の地形図に磁北線を引きます。磁北線とは磁石の北を指す線です。
コンパスを地図の北と同じ方向に向けて、先ほどの真北から7°20’の方向へ線を引きます。
※7度20分は7.333度 これは20/60の0.333を7に足すことで求められます。
7.2度ではありませんよ!
簡単にしたい場合はgoogleで「7度20分は何度?」と検索してみましょう!
コンパスを使っても、分度器を使っても大丈夫なので。地形図の左右の端から7.33度西へ(右)へ、ズレた線を引きましょう。でも、コンパスできちんと角度を出すのは至難の業です。分度器でもなかなか難しい。1度以下なんて無理です。どうしよう。。。
完璧な磁北線の引き方
完璧な磁北線を引くには、三角関数です。
tanを使うと、とっても正確な磁北線が引けます。
この数式を使えば、分度器やコンパスは不要です!
下の図は地形図に4cm間隔で磁北線を引くときの数式です。
X=磁北線の間隔÷tan(磁北偏差)
たぶん、普通のガイドさんはこんな事を考えないでしょうが、地理学科出身なので(^^)
もう関数電卓なしではこんな計算出来ません。。。
関数電卓での式はこのようになります。アプリって便利!
コンパスの使い方
コンパスは北を測るだけではない
登山のコンパスにはどうしてプレートが必要なのでしょうか。
実際に北を知りたいだけなら、高いプレート付きのコンパスは必要ないです。
安い方位磁石でいいんです。
コンパスとはいったいどういう道具なのかを考えてみましょう。
コンパスとは目標とする物や方向が、磁北から何度の角度にあるかを、測る道具なのです。
そのためには磁北からのズレを測るベースとなるプレートが必要です。
コンパスを使い目標の山を見つける
コンパスは先ほど書いたように磁北からの角度を測る道具です。
地図から目標物を見つける。
例えば、白馬岳から小蓮華山を見たい!どうするのか?
コンパスのプレートの縁を、白馬岳の山頂から小蓮華山へ向けます。
わかりやすいように、赤いペンで直線を引いてみました。
次は
ベアリングの下の線を磁北と平行にします。すると、角度がでます。
ベアリングとはコンパスの回転するリングのこと。このリングに赤と黒の線が入っています。
この線を地形図に書いた磁北線と並行にします。
この角度が、白馬岳の山頂では磁北から、何度方向に小蓮華山があるかという事を示しています。
白馬岳の山頂でコンパスのベアリングを50度にして磁北線とコンパスを合わせると、その先には小蓮華山があるはずです。
遠くの山を見つけるには、縮尺の小さい広範囲の地図を利用しましょう。
ベースの北を指すラインがちゃんとあるので
コンパスはSUNTO社よりもSILVA社のものをお勧めします。
机上で出来ても実際に上手く出来ても、
スムーズに山で出来るようなるには、繰り返しの練習が欠かせません。
出来る人とたまには練習しましょう。やらないと忘れます。
間違いなく。。。
いかがでしょう?
少しは理解できましたか??
きちんとした地図の基礎を学びたければ、このページの内容でも丸一日かかります。
私も地図読み講習を行いますが、午前中は3時間教室で講習、午後は実際に歩いて現在地や尾根、谷を確認します。そして最後に山座同定。
地図読み講習を受ける場合は、その辺をきちんと考えてあるのを選んで下さい。
登山口に集合していきなり歩きながら地図読みなんて、初心者には無理ですから。。。