登山ガイド・山岳ガイドになりたい方へ

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ガイドを目指している方から、時々問い合わせがあります。ガイドのサイトにしてはここがアクセスが多いからだと思いますが。

どうしたらガイドになれますか?
どうしたら海外の山を案内できますか?
実際に生活していけますか?
などなど。。。

きっと自然が好きな方々には「好きなことを仕事にしている」と憧れがあるのかもしれません。
でも実際はどうなんでしょうか?

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山のガイドになるということ

日本山岳ガイド協会の認定ガイドでなくていいなら、今日からガイドと名乗っても問題ありません。日本では国家資格ではないので、なくても案内することに規制はありません。ここでは日本山岳ガイド協会のガイドになるということと、ガイドで食べていくということに関して書いています。有名なガイドさんでも、日本山岳ガイド協会の資格を持っていない人もいます。

山や自然が好きで、ガイドになりたい!と思う方。あなたはお金を出してガイドを雇ったことがありますか? 

雇ったことない方は。何度かはガイドを雇い山に行くべきですよ。実態もわかるし、いろいろな話を聞くこともできるでしょう。

体力があり、技術があっても、山が得意なだけでは食べていけるガイドにはなれません。様々なビジネス感覚が必要です!

ガイドの仕事は典型的な3K

山のガイドっていうのは、ホントに3K(きつい・汚い・危険)だと思います。そりゃそうです。重たい荷物を背負い、汗だくになり、危険なコースを歩いたりします。アルプスの山小屋には風呂もないし。。。山が好きじゃなかったらやれない仕事ですよね。

ガイドの仕事は不安定

ガイドの仕事は安定しないです。ガイドになりたいと思う時点で、サラリーマンのような安定した給料があるわけないのは理解していると思います。

そもそもお客さんが集まらない。集まっても、天候による中止・お客様の都合によるキャンセル・旅行会社のツアーキャンセル・ガイドの体調管理 などなど、不安定な要素がいっぱいです。

これまで何回も台風や悪天候で登山を中止しました。もちろん中止になれば収入は0!

旅行会社のツアー中止も悩ましいです。早い時は1年以上も前からスケジュールを押さえられていても、中止になれば0円です。そのリスクを納得して旅行会社と付き合うかどうかは、ガイドさんの考え方次第ですが。2020年からのコロナみたいなことになると、大変です。旅行会社に依存していたガイドさんは暫くの間、仕事は0になっていましたから。私は、旅行会社の仕事は不確実で制約が多く、ギャラも個人ガイド以下になるので現在は受けていません。

怪我をしてガイドができなくなれば、もちろん収入は途絶えます。一般サラリーマンよりもあらゆる意味でリスクは高いです。

同業ライバルは増え、ガイドの需要は減る?

日本山岳ガイド協会は登山ガイド育成学校を開設したし。登山ガイドの専門学校までできたりしていますからね。ガイドのライバルは増えます。

日本山岳ガイド協会ホームページ
i-nac 国際自然環境アウトドア専門学校
Just another WordPress site

山のガイドは増える一方です。それに対して、ガイド登山のマーケットが大きくなっていないと思います。ツアー登山ブームや日本百名山ブームを牽引した、団塊の世代が登山をどんどん引退しています。比較的裕福である団塊世代の引退は、ツアー登山を主力としていたガイドさんには、かなりの痛手になりはじめました。従来のやり方を変える必要があります。

一方で20代〜30代はアウトドアブームで登山をする方は増えている印象です。しかし、その若者世代にはガイドを雇って山に行くという文化が基本的にありません。若者がガイドを雇うのは金額的負担が大きくなります。そもそもほとんどのガイドさんは、中高年以上をターゲットとしていますから、若い顧客を満足させるのは難しいでしょう。

同じ山でも、私は年代によって案内の方法をガラッと変えます。そうしなきゃいけないほど、年代によってカルチャーは異なります。スマホの進化で登山に使えるアプリがどんどん進化しています。夏山の道案内、植物判定のAI、山座同定のARなどなど。一方通行で知識を伝えていたガイドが不要な時代がすぐそこまで来ています。

ガイドの年収・収入

簡単にいくらとは言えません。ガイドさんによって、ものすごく幅があります。生活できないくらい儲かってない方から、1,000万円を越える方まで。1000万ってすごいですよね!でも、その収入を得る知識と経験・技術を得るには、何年かかる??? どれだけの努力がいる?? どれだけの経費がかかる??? きっと大企業で出世するほうが簡単です。

現実にはガイド一本では食べていけなくて、副業で補いつつやっている方の方が多いいんです。ネットで検索してヒットするのは専業ガイドさんが多いですが、実際には専業ガイドさんの比率は高くありません。そして、専業でも安定して食べていけてるかはまた別ですし。

私の副業はこのサイトづくり。登山に役に立つ情報を発信しつつ、読者は対価としてアマゾンとかで買い物してくれたら嬉しいなぁみたいな。

サラリーマンの平均年収が4〜500万円程度といわれます。ガイドの日当は3万円が目安。例えば年間200日も山を案内して、やっと600万円を超えるくらい。そこから経費がかかります。サラリーマンは年間休日は120日、有給が20日。ホワイト企業なら実際の出勤は220日程度です。ガイドの多くは個人事業主なので、割高の国民健康保険、給付の少ない国民年金、労災保険なし、退職金なし、セーフティーネットは大きく劣ります。よっぽどやれる自信がなければ、そこそこのポジションにいたサラリーマンは退職してガイドを目指す金銭的なメリットは全くありません。

ガイドをしている方ならわかるかと思いますが、3万円以上の単価の仕事が年間200日以上ある方は、ほんの一部。某有名アウトドアメーカーのツアーでも日当は2万円程らしいです。旅行会社ではなく、個人や公募のガイドで単価を上げていかないと経済的には厳しいと思います。

経済的余裕を掴むなら、自分で仕事をとってこれるガイドでなければ無理でしょう。仮に200日以上の仕事があっても体がしんどいです。

専業ガイドでやっていくのは一般の方の想像以上に大変だと思います。

ガイドライセンスを取得しても簡単に仕事は入ってこない

ガイドのライセンスを取得するのが目的になっている方をお見かけします。取ってからどういう仕事をしたいのかが明確になっていないと、成功は難しいでしょう。普通に考えてみると、ガイド経験が浅い新人ガイドを好き好んで雇う理由がお客さんには全くありませんからね。

私が顧客なら、特別なスキルがない新人ガイドは絶対に雇わないです。

ガイドは経験が大きくものをいう仕事です。いくら一生懸命勉強やトレーニングをしても、経験を得ることはできません。時間をかけて、お客さんの案内経験を蓄積させないと。

どうやって一般に知ってもらうのかとハードルも高い。このホームページが年間100万以上のアクセスが有りますが、それでもネットからの成約率は高くありません(実体験)!
個人ガイドとして独立しても、コネが最初からないと、開店休業状態の確率がかなり高いです。

年間100万アクセスあるこのサイトみたいなのを作るなんて、めっちゃ大変ですからね!続ける力とコンテンツと素材の全てが必要です。

ちなみに山岳ガイド協会は、仕事の斡旋はやってくれません!!!

山の技術より発想力と営業力

お客さんを安全に案内する知識と技術はもちろん必要ですよ。しかし、いくら練習でクライミングをしてもお客さんは増えません。常に鍛錬することは必要ですが、食べていくには、他のガイドができない企画を考えたり、色んな所に売り込んだりする能力が必要かと。

例えば夏のアルプスのガイドはレッドオーシャン状態です。ルートは決まっているので、企画力は必要なし。宿泊する山小屋は、相部屋でプライバシーゼロ、お風呂もなく、食事もワンパターン。言い方はよくないかもしれませんが、仕事場の宿泊先としては最悪です。時々ならいいけど、ずっとアルプス登山なら私はキツイです。ということで、あえてアルプスに仕事が集中しないようにコントロールしています。夏にアルプスへ行かなくても割の良いガイドは他にいっぱいあります。

私は、登山に固執しない。カヤック・サイクリング・シュノーケル・キャンプ・スキー・海外ツアーなどあらゆるアウトドアを登山と同列に並べて企画を考えます。そうすることによって、季節変動の激しいガイドの仕事量を安定させることができています。

これは簡単にマネができるものではなくて、日常的に山以外のアウトドアガイド経験を積んでおかないといけません。またギアなどの投資が増え、その割に稼働率が高くないのは大きな欠点になります。

お客様を楽しませるセンス

表現が難しいですが、ガイドを雇って山や自然に行くということは、安全だとか親切だとかは当たり前のことで、アピールポイントにはなりません。いかにお客様を楽しませる事ができるのかということが重要です。そして思い出に残る写真や映像を残してあげることも大切。このガイドさんと色々行きたいなぁ〜と思ってもらわないと。それにはいろいろ自分が遊んで、お客さんの気持ちがわかるようにならないといけませんね。

山のガイドの働き方

どうやったら、安定して食べていけるガイドになれるのでしょうか?色々なパターンがありますが主なものをあげてみます。ちなみに私は2017年8月までは旅行会社勤務、以降は発地型個人ガイドと旅行会社のツアーを案内するのミックスでした。2020年からは完全に発地型個人ガイドとしてやっています。

兼業ガイド

ぶっちゃけると、専業のガイドは多くありません。大半の方が他の仕事と掛け持ちです。もしくは年金貰いながら。これが現実です。。。

ただ、兼業しちゃうと、専業のガイドさんと経験の差がつくのは当たり前ですよね〜。経験値でどどんどん離されちゃいます。本気なら最初は苦しくても専業ガイドを目指すべきです。

着地型個人ガイド

得意なエリア、または住んでいる特定のエリアに絞ってガイドをする方法。そのエリアのシーズンON・OFFで仕事量の波が大きいのと、お客さんは同じ場所に何度も行かないから、リピーターを作りにくいのが難点。私は同じ場所を何度も案内すると飽きてしまうので、きっと向いていない。同じ場所を飽きないで、毎回高いホスピタリティーで案内できる才能が必要です。自らの努力より、そのエリアの人気やブームによって仕事量は左右されます。それでも、これからガイドを始めるなら、まずはこのタイプが現実的でしょう。

発地型個人ガイド

日本中・世界中の山を案内する!色んな所に行けていいねって思われるタイプのガイドです。旅行会社のようにあちこちを案内します。しかし、0から初めるならハードルはかなり高め、というか不可能に近いでしょう日本中・世界中の山を案内できるスキルとあらゆる知識&経験が必要だからです。行ったことない場所を案内できませんからね。私の知識と経験をゼロから下見で補うとすると、それだけで最低でも10年近い時間と相当な旅費がかかります。旅行会社で勉強させてもらって感謝です。

旅行会社に就職する

大手旅行会社は分業が進み、添乗員は派遣、ガイドは現地、社員はマネージメントというスタイルがほぼ確立されています。しかし、小さな旅行会社なら、企画してガイドに出るということも可能かもしれません。20〜30代前半なら知識と経験を得るにはいい選択肢。ただし、休みは少なく給料もかなり安い場合が多いです。お金をもらい知識を得ると割り切るなら、かなり有効な手段ですが。。。我慢も必要。

旅行会社はコロナで財務が悪くなり、円安で海外ツアーが減り、コロナ禍での融資も返済が始まっています。今後も継続可能なビジネスモデルなのか、その会社がその中で生き残ることができるのか、将来性をよくよく考えてみたほうがいいでしょう。

旅行会社の添乗員をする

給料は安いし不安定だけど、少し回り道してもいいと思うなら、最もおすすめなのが添乗員。理由は、自分が知らない、あちこちの山へお金をもらって行くことができるからです。そして、色々なガイドと歩いて知識を吸収できます。

最初から個人でガイドを始めちゃうと、他のガイドが実際にどうやっているか知ることは難しいです。添乗員なら、色々なガイドのやり方を知ることができます。若い時の私の場合だと、いいなあと思うガイドさんのやり方を真似するのはなかなか難しかったです。知識・経験に差がありすぎました。しかし、嫌なガイド、イマイチなガイドの真似をしないことは簡単です。

期間を決めて、自分への投資と思うなら悪くない選択肢です。もちろん努力していい添乗員となり、優先的に良い場所に(高単価ツアー)に行かせてもらえるようにならないと。添乗員でトップクラスになれないなら、ガイドで成功するのは相当難しいでしょう。

旅行会社のツアーを案内する

ツアーの案内は、旅行会社が手配も行程も添乗員も全部アレンジしてくれます。そして多くのお客さんと接することができます。
しかし、自分なら絶対に企画しない納得の行かないコースを案内することも出てくるかもしれません。とんでもない派遣添乗員がサポートで来るかもしれません。自分の努力と関係なしに仕事がなくなったりする可能性もあるので、特定の会社に依存し過ぎは問題があるかもしれません。某社の看板ガイドが意見の相違で切られたりしたのを見てきました。私も旅行会社時代に不義理を働いたガイドさんと契約を更新しなかったことがあります。旅行会社からすれば、ガイドの替えはいっぱいいるので、よほどスキルがないと対等な関係にはなりえません。旅行会社が頼ってくるガイドなら、個人で立派にやれると思います。

日当は会社によって様々で、いい会社と悪い会社では倍ほど違います。ガイドを使い捨てにしない、大切にしてくれる会社と付き合いたいものです。いい会社でも日当は40,000円程度。なかには12,000円って会社もあるそうです。ガイドも安売りしないでほしい。。。

まとめ

いろいろ書きましたが、日本のガイドの立場は高くなく、社会的な地位も低いです。
私の職業がガイドだと知ると、一番多い質問が「食べていけますか?」です。ガイドはそれくらいの社会的ステータスなのだと思います。ローンを組んだりするのも大変だとか。。。現状のままでは一般社団法人の資格のままで、業務独占可能な国家資格にもならないでしょう(ガイド協会は業務独占は諦めて名称独占に方向転換したようです。)

私はどうかって? いまのところ、なんとかなっています(笑) でも、こんな記事を書いていても、近い将来仕事がなくなるかもしれません。なんというか、常に追い込まれている感じがなくなることはありません。

ガイドは、山の技術・自然の知識はもちろん、接客・営業・企画の力が問われるサービス業です。俺について来い系の頑固な山親爺系ガイドは近い将来絶滅危惧種になるんじゃないかな?

大切なのはお金じゃない!って転職する人もいると思いますが、お金は大事です!ないと心に余裕が無くなります。お客さんより遊んでないと、いい遊びを案内することはできませんしね。

ガイドの資格を取れば仕事が貰える、湧いてくると思っている人は、時間もお金も無駄にする可能性が高いので、考え直した方がいいと思いますよ。資格はスタートライン、それからが重要です。ホントに現実はそれほど甘くはありません。

それを理解した上で目指す方は、頑張ってください! 成功すれば好きなことで生きていき、経済的&時間の自由も得ることができます。