トレランシューズと登山靴を考える

記事に広告が含まれています。

最近はトレイルランニングシューズ(以下トレランシューズ)で登山をしている人が増えてきました。六甲山あたりでは登山靴より多いいと思います。

中には登山靴不要論を主張する人もいたりします。ホントにトレランシューズは登山靴の代わりになるのでしょうか? 万能なのでしょうか?

考えてみました。でも、あくまで私の私見ですからね。

スポンサーリンク

トレランシューズは登山靴の代わりになるか?

トレランシューズと登山靴の大きな違い

・重量
登山靴にも色々な重さがありますが、圧倒的にトレランシューズが軽いです。見ればわかるし、それは比較になりません。

・足を保護する能力
トレランシューズは軽く作られているので、登山靴に比べて薄いです。登山靴では何でもないような場所でも、つま先や足の甲をぶつけたら痛いと思います。

・防水性
ゴアテックス素材のトレランシューズもありますが、一般的に登山靴のほうが優れています。

・ソールの硬さ
走ることを前提にしたトレランシューズは靴底が曲がりますが、重い荷物を背負うことを前提にした登山靴は底が硬いです。

・耐久性
軽いとどうしても耐久性は落ちます。トレランシューズは登山靴には耐久性は敵いません。

このあたりは、このブログを読まなくても想像できるのではないかと思いますが、まとめてみました。

トレランシューズはどこまで登山靴を代用できるのか

トレランシューズは登山靴の代わりになる場合もあるし、ならない場合もあります。山岳環境と登山者のレベルによります。

私はトレランシューズで新穂高温泉〜西穂高岳〜ジャンダルム〜奥穂高岳〜新穂高温泉を日帰り縦走したことがあります。上記のコースはアルプスの一般道では最大の難易度を誇ります。ということは、このコースをトレランシューズで行ったということは、登山靴の代わりになる!!

ではないですよね。

登山靴と比較すると、トレランシューズの方が危ないなぁと思うポイントが何ヶ所かあり、一般登山者は、登山靴でないと安全に歩けないと思いました。快適に歩けたか、安全に歩けたかが重要で、それができて登山靴の代わりになるのです。

西穂高岳縦走 ジャンダルムを経て奥穂高岳へ 
北アルプス屈指の難関縦走路を、新穂高温泉を起点に日帰りでぐるっと一周歩いてきました。ロープウェイを使っていないので、かなりの体力&技術が必要となります。ハードルは高いですが、無事に下山した後の充実感は半端ないです!

登山者に体力がありバランス感が標準以上の場合

特に傾斜のきつくない土の道(森林限界以下)であれば、登山靴と同じように問題なく歩けると思います。むしろ快適です。ただし、アルプスなどで森林限界を越えてゴロゴロの岩場のあるコースはトレランシューズは薦められません。ソールが柔らかいので、足の裏に力が必要になり疲れます。もちろん歩けないことはないですが。登山靴のつま先したのクライミングゾーンをうまく使って登っていた登山者は特に疲れるでしょう。逆に、登山靴をうまく使えていなかった登山者は、クライミングゾーン云々はよくわからないかもしれません。赤い丸がクライミングゾーンです。
条件付きで登山靴の代わりになります。

登山経験もトレラン経験もない体力に不安がある方

体力がない方は、軽いのでトレランシューズを選択したくなるかもしれませんが、足元が安定しません。トレランシューズの靴底はブレーキがしっかり効くパターンになっていないそうです。足全体で衝撃を吸収してブレーキをかける(某登山用品店の店長の話)。したがって、ある程度の筋力が必要になるとか。特に筋力の弱い年配の方は、登山靴の方が安心。
樹林帯でもトレランシューズではなく登山靴を選びましょう。

トレランシューズには向かない登山とは

以下の状況の登山ではトレランシューズではなく登山靴を強くおすすめします。よく考えてみると、トレランシューズで問題なく行ける範囲は、欧米では登山と呼ばないですよね〜(^^)

テントを持っていく場合

テント泊などの荷物が多い場合はトレランシューズより登山靴。ソールが柔らかいと足の裏が疲れます。また、耐久性に劣るので一気に靴が傷んできます。

雪山

ソールが柔らかいと蹴り込めないし、防寒性能も低い。雪山ではトレランシューズは登山靴の代わりにはなりません。絶対にやめましょう。北アルプスでトレランシュージでピッケルを持っているグループを見て、ビックリしたことがあります。。。靴が柔らかいと、アイゼンもきちんと固定できませんよ。

岩場

きっと岩場の経験がある登山者ほど、トレランシューズに戸惑うのでは? 私も戸惑いました。それは、トレランシューズは捻挫予防のためか、ソールが下に行くほど広がっているからです。登山靴では引っかからないソールのサイドが、トレランシューズでは岩に引っかかります。危ないです。西穂高〜ジャンダルム間では、何度かドッキっとしました。以後、トレランシューズでの本格的な岩場は避けています。

トレランシューズのメリットを強く主張する登山者とは

トレランシューズを持っているくらいなので、きっとトレランの経験があるのでしょう。山を走る競技なので、基本的に体力があるはずです。しかし、トレランと登山は似て非なるものです。私は登山は速いけど、トレランでは全然速くありません。トレランでめっちゃ速いけど、登山で荷物を背負うとずいぶん遅くなる人もいます。それぞれ、トレーニングや経験によって得意、不得意が違います。トレラン経験者が得意なのは荷物が少なく軽い状態です。それゆえ登山靴よりトレランシューズのメリットを主張するのだと思います。基本的な思考として

トレランはスピードのために、どこまで装備を減らせるか。
登山は安全のために、どこまで装備を運べるか。
私はトレランの装備は引き算登山の装備は足し算だと思っています。

もちろん、登山も荷物が軽い方がいいですよ!でも皆がトレランのような荷物しか持たずに登山をしたら、軽くて快適ですが、事故や遭難が多発するでしょうね。安全と快適の間で、どれぐらいの装備を持っていくのか? ということです。

きっとトレランシューズを強く勧める人のザックは小さいと思います。

トレランシューズで頻繁に登山をしたら結局は高くつく?

上記で、トレランシューズの耐久性について書きました。
メーカーやモデルにより耐久性も様々かと思います。しかし、登山靴に比べたら、それは圧倒的に劣ります。登山靴も様々ですが。。。

軽量のナイロンが皮革より丈夫なわけがないです。縫い目の丈夫さも、糸を見れば想像がつきます。トレランシューズの劣化による買い替えを考えれば、多少高くても登山靴を買ったほうが長い目で見れば、コストは安いと思います。

まとめてみると

トレランをやっていないのに、登山のためにわざわざトレランシューズは買わない!

トレイルランナーは岩場や雪山とかでなければ、今あるトレランシューズで登山してもOK!

私??
ガイドをするなら絶対に登山靴。冬以外のプライベートなら日帰りはトレランシューズ。それ以外は登山靴。一口に登山靴といっても、いろいろあります。

登山靴とトレッキングシューズの選び方と買い方
登山でいちばん重要な装備は登山靴かもしれません。種類が多くてわかりにくい登山靴の種類や選び方のポイント、上手な登山靴の選び方と買い方を紹介します。

トレランシューズは軽くて軽快ですが、軽い分は安全を削っているということを理解しておいて下さい。