山のガイドをしていると、時々遭遇するのが、登山靴の劣化による、ソール剥がれ。
靴底が剥がれてしまう状態です。
先日のツアーで、この事例に遭遇しましたので
どういう理由で、ソールが剥がれてしまうのか、どういう対処、対応をするべきなのかまとめてみました。
登山靴の経年劣化
最近の殆どの登山靴には、ミッドソールにポリウレタンが使用されています。ミッドソールとは靴の本体と靴底の間の部分になります。そのポリウレタンは製造から時間が経つことで、劣化してしまいます。いわゆる経年劣化と呼ばれるものです。
ポリウレタンは軽量、耐摩耗性、衝撃吸収性を持つので、登山靴の素材としては優れたものですが、弱点が加水分解による劣化です。
メーカーは5年前後が寿命だと告知していますが、問題なのは買って5年ではなく、製造から5年ということなのです。もちろん保存状態や使用状態によって寿命は長くも短くもなります。
登山靴の劣化が進みやすい様態と進みにくい状態
最も劣化が進む状態とは、ビニール袋や靴箱などに入れ密閉した安定した状態で長期間放置することです。ソールの剥離を起こした人の大半が、まだそれほど履いていないのに・・・。と言われるのも、こういった保存状態が影響したものと思われます。
劣化が進みにくい状態とは、定期的に靴を履いて山に行くこと。そして、風通しの良く、湿度の低い涼しい場所で保管することです。
普通は使用しないもののほうが長持ちしそうですが、靴は使用しないと劣化が進みやすくなります。
たとえ雪山でしか履かない靴でも、たまには取り出して少しは履いてあげましょう。
ソールが剥がれたら・剥がれそうになったら
山でソールが剥がれたら
迷わず下山です。
絶対に下山です。
絶対にやってはいけないのが、ここまで来たのだからと先へ進むこと。
書くのは簡単、でもその現場でその判断をすることは、簡単ではないこともある。
失礼な言い方かもしれないけれど
いい人ぶるガイドさんほど、連れて行ってあげようとします。
判断に自信のないガイドさんほど、登らせてあげようとします。
しかし、それは間違った判断です。
溝のないタイヤで濡れた路面を運転できますか?
ノーマルタイヤでアイスバーンを運転しますか?
底の剥がれた靴で山道を歩くのも同じようなことでしょう。
しかしながら、下山までの安全は確保する必要があるので、いろいろな手段でが完全に剥がれないように、処置をします。
紐でソールを縛る
針金でソールを縛る
テーピングなどでソールを縛る
など
私は必ず結束バンドを持っています。
一番早くて、丈夫です!100均で購入できますしね。
登山前に剥がれそうになったら
可哀想なお客さんの例ですが、北海道の大雪山の登山口で、ソールの部分剥がれが発覚。
山には連れて行きませんでした。
その日は個人で旭川まで出てもらって、靴を購入し、翌日は十勝岳を登山しました。
遠方の山、憧れの山だからというのは関係ありません。
判断は危ないか、危なくないか。安全が確保できるかそれだけ。
部分的にでも剥がれていたならば、登山は中止してください!
登山靴の寿命は買ってから5年ではない!
先日の剣山のツアーでのお話。
写真の靴はその時のお客さんのものです。
そのお客さんの話を聞いて驚いた!
購入したのは昨年の夏前。。。
発覚したのが2日目の朝、剣山頂上ヒュッテでした。残念ですが、そのお客様にはリフト駅まで下山していただきました。
激安セール商品に気をつけよう
そのお客さんが購入したのは、ネットからでした。いくらだったか覚えていないが、安かったと思うとのこと。。。。
いくら安くても、何年も前の商品はすでに劣化が進んでいて、使用できる期間が短くなっている可能性が高いです。ネットでの購入が悪いわけではありませんが、安い理由を聞くことができればよかったかもしれません。
倉庫やお店での保管状況も劣化が進みやすい環境であることが多いでしょう。
いくら安くても、使える期間が短ければ、お得な商品ではないですよね。
じつは、このポリウレタンは靴だけに使われているわけではありません。
いろいろなアウドドアウェアなどにも使われています。
そのことは、また時間を見つけて書いてみたいと思います。
安全を守るために必要なアウトドア装備は、可能な限り新しい商品を購入しましょう。
型落ちセール商品は、何年前のモデルかを確認しましょう!
山に行く前には、靴が劣化していないか確認する習慣をつけるようにして下さい!
私?? 残念ながらポリウレタンが劣化する前に、登山靴の底がすり減ってしまい寿命が来ます。しかし、登山靴ではなく沢の靴は、劣化して捨てたことがあります。
出発の前の夜に確認しても、間に合わないです。
必ず数日前に装備の確認をするようにしましょう。