登山中のトラブルで多いのが足の痙攣。
痙攣対策として、広く普及した漢方薬があります。68番こと芍薬甘草湯です。今や、ベテラン登山者の半数近い方が携行していると思われます。
この記事を書こうと思ったきっかけは、某旅行会社のツアーで事前に芍薬甘草湯を服用しようとしたお客さんに、注意したら「これまでのガイドさんは、足が攣らないように薬を事前服用するように言っていた」どっちが正しいの?って言われたことからです。
登山中に足が攣るのは、恐怖です。
私は登山では攣ることはまずないですが、トレイルランニングの大会に出た時は、攣りまくったことがあります。。。他には雪山のテントで座っている時とか。痛いし、力はいらないし、庇っていると体のバランスが悪くなり、反対の足まで攣ってしまったり。。。
そこで登場するのが芍薬甘草湯なのですが、使い方を間違えないようにしましょう。
登山で足の痙攣が発生する3つの理由
日頃の運動不足
日常的に運動をしていない人が、突然負荷の強い運動をすると、筋肉がついていけずに。。。日頃のトレーニングは大切です。
筋肉の使いすぎ
運動不足とは違います。運動する時に筋肉は、収縮と弛緩を繰り返します。筋肉は収縮した時にのみ力を出すことができます。しかし、強負荷の運動が断続的に続いたりした場合は、筋肉を緩める動きである、弛緩の動きができなくなり、収縮し緊張した状態になります。そのため、痙攣した筋肉はカチカチになるのです。
水分とミネラルの不足
筋肉をきちんと動かすには、水分とミネラルが必要です。登山中は発汗などにより、断続的に体内から失われていきますので、きちんとした補給が必要です。休憩時には必ず水分を補給する。また糖分だけでなく、ミネラルを含んだ行動食を摂取する事が必要です。
登山で足の痙攣を回避する3つの方法
運動不足→トレーニング
日頃の運動不足には、日頃から運動をする習慣をつけることが大切。誰でも分かることですが、できていない人が多いのも事実。
筋肉の使いすぎ→歩き方の改善
歩き方を少し変えるだけで、筋肉の使用状況は大きく変わります。
歩き方が下手だと私が思う登山者は、歩幅が広く、上体の揺れが大きい。
特に登りで歩幅が広いと、一歩を踏み出す時、筋肉に大きな負担がかかります。
私が3歩のところを2歩で歩いていたり。私は車や自転車のギアに例えて説明します。坂道ではギアを下げて、エンジンやペダルの回転数を上げて進みます。人の体も同じようなもの。ゆるい負荷を長時間続より、強い負荷を短時間の方が、筋肉は疲れます。
水分とミネラルの不足→効果的な補給
最も効果的なのは、イオン系(電解質)の多く含まれたドリンクで水分を補給することです。ペットボトルで販売されているものや粉末で販売されているものなど、いろいろ。私は粉末を規定の倍くらいの水で溶かし、飲用することをすすめます。規定の量だと、甘すぎると思います。他にも塩飴や塩タブレットなどを夏の山では持参します。行動食といえば、糖分の補給と思われている方もいますが、塩分、ミネラルの補給も非常に大切です。
また、登山前からしっかりと水分を補給しておきましょう。
芍薬甘草湯とは
その名の通り「芍薬」と「甘草」が含まれる漢方薬。68番との省略して呼ぶ方も多いです。
薬のことは、下手に書くといろいろとややこしいので、専門サイトから引用します。
芍薬甘草湯の芍薬に含まれるペオニフロリンという成分は、筋肉が収縮するために必要なカルシウムの細胞内流入を減らし、結果として筋肉の収縮を押さえると考えられています。これに加え、甘草に含まれるグリチルリチンは、カリウムイオンの流出を増やすことで、最終的に神経筋シナプスのアセチルコリン受容体に作用し、筋弛緩の働きをもつとされています。
引用 漢方薬ナビゲーション
冒頭でも書きましたが、多くの登山者に普及しています。
そして、痙攣の後に服用すると、数分から15分程度で痙攣が収まる方が多いです。
芍薬甘草湯信仰のような考えをもつ人もいます。これさえ持っていれば登れると。。
さらに、予防で服用している人までいます。
ちょっと待って! よく考えてみましょう。
芍薬甘草湯は薬あって、サプリメントではない!
芍薬甘草湯を痙攣予防で服用してはいけない。
芍薬甘草湯は漢方薬ですが、薬であることに変わりはありません。
指摘すると、漢方だから体にいいと思っている方もいました。
体全体にいい薬などありません! 副作用があったり、耐性ができてきたりします。
攣ったら困るから、先に芍薬甘草湯を服用しておくなんてもってのほか!
普通の薬は、症状が出てから服用するものです。それって風邪をひきたくないから、風邪薬を服用しているようなものじゃないですか?
予防に服用していたお客さんに注意をしてみたら、それを勧めているガイドさんがいたとのこと。。。
その場限りのガイドさん(現地ガイド)であれば、その登山中に足が攣らなかったら、仕事が楽になるし、お客さんを登山者として育てていくという概念がないので、ありえるかもしれません。もしくは知識が少ないか。
Q朝方に足がつることが多いのですが、寝る前に予防的に「芍薬甘草湯」を服用してもいいですか?A「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」には、「こむらがえりの予防」という効能がありませんので、予防で服用することはおすすめできません。実際に痛みが起こってから服用するようにしてください。ただし、足のつり、こむらがえりなどでは前兆があることも多いので、症状が起こりそうだと感じたら早めに服用してください。また、夏の夜はとくに発汗しやすいので、寝る前にスポーツドリンクを飲むなどして、水分と栄養分を補給し、寝るようにしましょう。
予防服用することによるデメリット
芍薬甘草湯を予防服用していいると、安心してしまい、上記で記した歩き方や水分、ミネラル補給が疎かになりがちになります。薬は最後の手段。まずは薬に頼らないで歩ける体力、技術を身につける練習をしましょう。いざという時の為に持っていくのは、いいことだと思います。
ガイドは薬を絶対に出しません
最近は減りましたが、お客さんから飲み薬の提供を求められる事があります。
風邪薬・胃腸薬・芍薬甘草湯・痛み止め、などなど
しかし、絶対にお客さんには提供しませんのでご了承下さい。決まりです。
本人が同意していても、副作用などで何かあった場合に、家族の方から裁判を起こされると、ほぼ100%負けます。親切心や自己責任が通じない、面倒くさい世の中になりましたね。
ということですので、薬類は必ずご自身の体にあったものをご準備下さい!