登山&アウトドアガイドの沖本です!
北海道日高山脈のカムイエクウチカウシ山に登ってきました。簡単な山ではなく、誰にでも勧められる山ではありません。が、紹介してみたいと思います!
カムイエクウチカウシ山とは
北海道の日高山脈、新ひだか町と中札内村の境界にそびえる日高山脈第二の高峰です。実質的な登山はすべて中札内村管内。カムイエクウチカウシ山という名前は長くて言いにくいので、一般的な登山者は「カムエク」と略します。
アイヌ語では「熊の転げ落ちる山」との意味があるとか。そして、ヒグマの事故が多い山として知られています。1970年には襲われた3名が亡くなるという悲惨な事故が発生しています。最近では2019年は2件の事故が起こり、登山自粛要請が出たことも。
日本二百名山に選ばれていますが、その中では最難の山と言われたりします。ちなみに日本百名山の最難の山は幌尻岳かな。私は百名山を全部案内できますが、たしかに幌尻岳は過去に色々苦労しました(笑) 幌尻岳は日高山脈の最高峰なので、日高の山がいかに難しいかということがわかるのではないでしょうか。
カムイエクウチカウシ山の標高は1979mですが、山の難易度は標高だけでは測れません。
カムイエクウチカウシ山が難しい理由
沢歩きが必要
沢登りやクライミングをする登山者にとっては、特別な難易度ではありません。
しかし、日本百名山や二百名山を目指して登る一般的な登山者には、沢登りは未知な登山方法です。いわゆる旅行会社が募集する登山ツアーでは、このあたりが最大の難易度になります。旅行会社がやる場所ではないと個人的には思いますが。。また、雨で増水などのリクスも格段に高くなります。
百名山の幌尻岳でも何度か渡渉はありますが、数や難易度ではカムイエクウチカウシ山の比較にはなりません。
急な斜面
アイヌ語では「熊の転げ落ちる山」との意味があるように、滝の横の急登などがあります。要注意です。また、張られているロープも信用ができないほど劣化していたりします。自信のない方は自らのロープを持参すべきです。
同じ北海道でも大雪山系は山の歴史が浅く、今の主な山体が作られたのは氷河期以降です。ということで氷河の影響が少なく、カールなどが発達しませんでした。一方、日高の山には氷河が発達しました。カムイエクウチカウシ山の急斜面は八ノ沢カールから流れ出した氷河が流れ落ちていた氷食谷源頭壁です。
山小屋がない
カムイエクウチカウシ山には営業の山小屋がないのは当然として、避難小屋すらありません。必ずテントなどの野営の準備が必要となります。テント装備を背負い、沢の靴で長時間歩くと足への負担も高くなります。
ヒグマの対応
カムイエクウチカウシ山といえば、ヒグマです。上記でも書きましたが、過去に悲惨な事故も起こっています。
知識だけではどうなるもんでもないでしょうが、警戒やいざという時のシュミレーションをしておいたほうがいいでしょう。もちろんクマ撃退スプレーは必須。※この写真はカムイエクウチカウシ山で撮影したものではありません
カムイエクウチカウシ山の登り方
カムイエクウチカウシ山の行程
一般的には2日間か3日間になります。一度登ったことがあるのであれば、健脚者なら日帰りも不可能ではありませんが、アクシデント時に対応する時間も装備もないので、おすすめできる登り方ではありません。暗闇で動く時間も長くなり、ヒグマリスクの高い山であることなどを考えると、止めたほうがいい。
一般的にはいずれかの登り方になるのではないかと思います。
おすすめは3日間の準備で山に入り、テントサイトへ下山が早くできたら2日間に短縮でしょうか。
① | 林道ゲート…七ノ沢出合…八ノ沢出合(680m) テント泊 |
② | …八ノ沢…八ノ沢カール…カムイエクウチカウシ山(1979m)…八ノ沢…七ノ沢出合…林道ゲート |
① | 林道ゲート…七ノ沢出合…八ノ沢出合(680m) テント泊 |
② | …八ノ沢…八ノ沢カール…カムイエクウチカウシ山(1979m)…八ノ沢 テント泊 |
③ | …七ノ沢出合…林道ゲート |
私達は2日間で登ってきました。
カムイエクウチカウシ山 / 沖本浩一さんのカムイエクウチカウシ山の活動データ | YAMAP / ヤマップ
私達は、2年前に知床岬へ行っているので、それに比べれば楽勝???
カムイエクウチカウシ山の登山に適した時期
カムイエクウチカウシ山には多くの雪が降り、遅い時期まで雪渓が残ります。年によりますが7月の下旬から9月の下旬の2ヶ月程度かと思われます。9月の下旬になれば、渡渉は寒いし日照時間もかなり短くなるので注意が必要です。7月の中旬までならアイゼンが必要になるかもしれません。沢タビではキックステップができないことを念頭に入れておきましょう。
カムイエクウチカウシ登山の前に
中札内町の札内川園地キャンプ場に併設されている、日高山脈山岳センターへ立ち寄ってみましょう。日高山脈のことや、福岡大学ワンダーフォーゲル部のヒグマ事故に関しての資料が展示してあります。
大学生を襲ったヒグマも剥製にして展示してあります。
ここで登山届を出せると思ったのですが、登山届は登山口へ行く途中の中札内ヒュッテで出して欲しいとの事でした。
林道ゲートから七ノ沢出合いまで
登山の前には登山届。林道の途中に中札内ヒュッテがあります。そこで登山届をポストへ。
林道ゲートから、七ノ沢出合いまでは林道歩きになります。ただ、この林道歩き、長いですよ! ※悪名高き、幌尻岳の新冠コースよりはかなりマシです。
長時間の林道歩きが嫌な方は、自転車を持ってくるのはOKです。
レンタル自転車を調達する場合は、帯広駅の前にある「とかっちゃ」へ。スッタフは親切で、自転車の整備状況もいいです!私達もここでレンタルしました。
折りたたみは台数が少ないので、予約したほうがいいでしょう。
荷物が重いのでお尻にやや食い込みますが、歩くよりはいい!
すぐに取り出せる所にクマスプレーを装着します。
サイクリングもいいもんです! ただ、登りですが(笑)
途中から、歩いても良かったかなぁ〜なんて思ったり。。。
道が荒れてきたら、もうすぐ。
自転車なら40〜50分で七ノ沢出合へ到着です。
ここから、札内川へ入ります
七ノ沢出合から八ノ沢出合
河原に出て、札内川を遡ります。沢登りというより川歩き。
この日はこんな河原を歩くのみ
クマがいそうな雰囲気(笑)
川が狭くなってきたら、もうすぐ八ノ沢出合!
適当なキャンプ地を見つけます。
テントはそれぞれソロテント
食事は匂いのしにくい物で、手早く終わらせましょう。
北海道の沢水を利用するので、浄水器は必須! エキノコックスのリスクがあるので、必ず使ってください。
八の沢出合から八の沢カール
長い一日になります!
まだ暗いうちに出発。テントは張りっぱなしで、下山後に撤収。軽い荷物でアタックです。
八ノ沢を遡っていきます。
晴れていれば、きれいな沢なんだろうなぁ。天気予報外れています。。。。
残雪が。お盆過ぎたこの時期に、800mもない標高で残っているって凄い。
傾斜はどんどんときつくなります。
ロープの劣化具合はやばいです。使わないことを強く推奨します。
段々言葉数が減ってくる。。。
立派な滝が現れた!!
滝の脇を登っていきます。
少しガスが切れてきた!
沢も細くなり、カールまでもうすぐです。
そして、カールへ!!
八ノ沢カールからカムイエクウチカウシ山
ついに到着です!
今までの急な登りと比べると、楽園のよう! 晴れてたらきっと感動するんだろうなぁ。
ヒグマ事故のプレートがあります。
周辺を歩いてみます
ここでは最近も2件のヒグマ事故が起こっています。
わかるかなぁ?手前のキャンプ地の左に樹木をのこぎりで切って焚き火しようとして失敗した跡が。
拡大すると。ホンマにこんなバカなことやめて欲しい。葉っぱの状態から見て1日も経っていない。雨で生の木に火が付くわけない。
きっと7月ならお花畑であろう、斜面を登ります
岩塊の斜面が
カールを登りきり、稜線にでて暫くすると山頂です!
展望ゼロは悲しいけど、充実感はあります!
カムイエクウチカウシ山下山
当たり前ですが、下山のほうが危ないです。
ここで急がなくていいようなプランニングが必要。
八ノ沢を下れば、怖いのはヒグマのみ(笑)
テントを撤収し、七ノ沢出合まで歩き、自転車でゲートへ。下山時の自転車は神です!!楽勝過ぎた。
結局ヒグマには会わず。一匹くらいは会うかなぁ〜って思っていたので拍子抜け。あったのはうんちだけでした。
無事に下山して、山岳センターへ寄り
帯広まで戻って、夕食は焼き肉! 平和園はおすすめ!
カムイエクウチカウシ山の装備
山小屋がないので、テントと自炊の装備が必要になります。
また、通常の登山と違い沢を歩くので、渓流シューズ。急な岩場を歩くのでヘルメットなども必要です。
一般的な登山ウェアやシューズ以外に主に以下のようなものが必要になります。
テント
バーナー
シュラフ
サワタビ
ロープ 私は8mmの30mを持参しました
ヘルメット
クマスプレー
浄水器
沢は事故の確率は山より高いし、携帯の電波も入りにくく、レスキューも呼びにくいです。
きちんと登山届を出して、安全に歩けるように装備などの準備もしっかりとしておきましょう。
こういったエリアでは、可能な限り単独行動は避けたほうがいいかと思います。